1.終活とは?
2. 終活のメリット
3. 生前整理
4. エンディングノート
5. 遺言書
6. 尊厳死宣言公正証書
7. 認知症対策(資産凍結防止/終末期対策)
8. 自分が死んだらどうしてほしいのか?
「終活」とは?
終活とは、いつかはやってくる自分の死を忌避せずに向き合い、最後まで自分らしい人生を送り、「立つ鳥跡を濁さず」、残される人に手数や迷惑をかけないよう、キレイにこの世を去る準備をすること。
自分がこれからの人生をどう過ごしたいのか、どこで最期を迎え、その後はどうしてほしいのか、相続、遺言、保険、介護、葬儀、お墓などをどうするのか計画的に準備したり、残る家族への頼みごとを書き残したりしておくことで、自分の人生の有終の美を飾る総仕上げをすることといってよいと思います。
しかしながら、世の中には、これをしない人、できない人がなんと多いことか。
ウチの母もそうでしたが、残念なことに多くの人が何もしないで亡くなります。
具体的にいうと「遺言書」と「エンディングノート」、これらがあれば、残される家族にとって、
⓵故人の記録や想いが目に見えるカタチで残り、家族に伝えられる。
⓶相続トラブルを回避・予防する。
という効果が少なからずあるのですが、
こういうものを書くとすれば、まずは「自分の死」と向き合わなければなりませんが、これがなかなかできない人が多いようです。
自分もいつかは死ぬという厳然たる自然の節理、現実から目を背けたいのでしょうが、しかしどうやっても生物は必ず死ぬのですから、このような考えは潔くないばかりか自分本位で、残される家族にも迷惑をかけることになると知らなければなりません。
まさに、自分が死んだ後、自分の魂が空中から自分の亡骸を見下ろしているように、自分以外の周囲、家族や地域の人や、大袈裟かもしれませんが自分を取り巻く社会を俯瞰(ふかん)で見ている状態を想像してみれば解ると思うのですが・・・
終活のメリット
終活で得られるメリットは、次の3つだと思います。
1つ目は、自分の頭の中にしかないことを、カタチにすることで家族に伝えることができます。
最後までコミュニケーションがよくできないままお別れになってしまう家族も多いです。
私はこれまで祖父、祖母、叔父、父、母などを見送りましたが、ドラマのように、いまわの際まで家族としっかり会話できることなど現実にはほぼありません。
日本人の平均寿命は延びてはいますが、不健康寿命は男性で約9年、女性で約12年もあります。
寝たきりで弱ってくると、意思疎通も難しくなってくるし、最悪、私の母のように認知症になってしまったら、意思疎通どころかもはや元の本人でもなくなります。
どうしても家族とこの手の話ができないのなら、エンディングノートに書き残しておくか、あるいは遺言書を作っておくのがよいと思います。
2つ目は、遺産相続のトラブルを回避/予防できます。
お金の話をするのはイヤラシイと、財産のことを家族にも秘密にしておくのは、状況によっては危険であり、あまり賢いとは言えません。
「誰に何を(どれくらい)相続させるのか」を、生前にある程度は伝えておかないと、自分の死後に家族間でトラブルになる恐れがあります。
エンディングノートでも、家族仲が良ければ遺産分割協議の際に役に立つと思いますが、法的拘束力が必要な場合には「遺言書」を、自分がある程度元気なうちに作成しておきましょう。
遺言書を作成するなら、遺言どおりの遺産分配がスムーズに実施できるよう、遺言書の中で「遺言執行者」を指定しておきましょう。
執行者を指定していないと、遺言がないときの遺産分割手続きと同様に、多くの手続きに相続人全員の実印と印鑑証明書が必要になりますが、遺言執行者がいれば、執行者一人で全ての分割手続きが実行できます。
3つ目は、残された老後生活を充実させることができます。
死を人生のゴールとするなら、先行きが曖昧なゴールより、ある程度自身で把握できたほうが、残りの時間を有効に活用できるでしょう。
生前整理をする
家の中の整理をするには、すべてのモノを出して、選んで、不要なモノを処分し、必要なモノを使いやすく収納し直すことになるので、かなりの気力と体力が必要です。そして「本当に必要なのか」を見極める判断力も必要です。
転勤などで引っ越しが多かった方は、そのたびに持ち物の取捨選択をしているので、結構整理されていたりしますが、何十年も同じ家に住んでいる方は、かなりモノが溜まっている可能性が大です。
また、人にもよるでしょうが、60・70代以降になると、沢山のモノに囲まれていると安心するのか、単に捨てることができないだけなのかわかりませんが、家の中がモノだらけになるケースが多いです。
高齢になってからでは、家いっぱいのモノを整理する気力、体力、判断力はだんだんなくなってきます。
将来は老人ホームへ入るという選択を自らされる方も、ホームに入るしか選択肢のない方も、一軒の家から一つの部屋に引っ越すことになるので、持って行けるモノの数はかなり限られます。
それまでの間、全く整理に手を付けていなければ、自分の面倒を見てくれる家族にかなりの負担をさせることになります。
ちなみに、私の母が認知症になってホームに入り、もう家には帰れない状況になった後、実家に足の踏み場もないほどあふれかえったモノを私が整理せざるを得ませんでしたが、作業員のべ7名で丸二日かかって、2tトラック山盛り4杯分の不用品を処分し、片付け業者に37万円も代金を支払うハメになりましたのでご参考までに。(>_<)(ToT)
自分で動けるうちに行うこと。
65~70歳を節目に生前整理を行うのも一考です。
「健康寿命」とは、健康に問題なく自力で生活を送れる期間のことを言います。
厚生労働省の統計によれば、2016年現在、日本人の平均健康寿命は、男性で72.14歳、女性で74.79歳です。
言い換えれば、70歳を過ぎてくると、身体に不調が出始め、自力での生活が困難になる人が多くなるということです。
生前整理は自力で行うことが大切なので、平均健康寿命の一歩手前である70歳頃までには、生前整理について今一度考えてみましょう。
「葉隠」(はがくれ)の精神
武士道精神の修養書として知られる「葉隠」の一節ですが、
「いつでも討死する覚悟に徹し、まったく死身になりきって、奉公も勤め、武道をも励んだならば、恥辱を受けるようなことはあるまい。
このようなことに少しも気がつかず、欲得や我儘ばかりで日を送り、何かにつけて恥をかき、しかもそれを恥とも思わないで自分さえ気持ちがよかったら他人はどうでもよいなどと言って、勝手気儘な行いをするようになってきたのは、いかにも残念なことである。
平素から、いつ死んでも心残りはないという覚悟を決めていない者は、きっと死場所もよくないだろう。
そして、平素から必死の覚悟でいるならば、どうして賤しい振舞ができよう。」
(角川文庫知的生き方文庫シリーズ 奈良本辰也著 『葉隠』より)
これを、現代風に言い直せば、↓
「いつ死んでも悔いはないくらいに自分の生き方に誇りを持ち、世のため、誰かのために誠心誠意、親身になって仕事をするとともに、自らの心や身体の健康のためにスポーツにも励むような人生を送れば、死んだ後も人様から後ろ指を指されるようなことはないはずである。
こんなことにも気が付かず、金儲けや出世にばかり血道をあげたり、ろくに勉強もせず浅学無知で恥を恥とも思わず、自分さえよければ他人のことはどうでもよく自己中心的なことばかりするような者は、非常に残念な人間である。
人はいつかは死に、それがいつ来るかも分からないのに、自分だけは死なないかのような振舞いしかできない者は、きっといい死に方はしないだろう。
平素からいつ死んでも悔いはないという心構えがあれば、そんな卑しい言動ができる訳がない。」
誇り高き人は、自分の命を徒に永らえ周りに迷惑をかけるのを良しとはしないということでしょう。
もしも今、突然あなたが死んだと仮定してみて下さい。
家の中で死んでいるあなたが誰かに発見されるところを想像してみて下さい。
倒れているあなたの着ている服や、身の周りのモノや、家の中や部屋の状況は、誰に見られても恥ずかしくないですか?
自分の死体以外に、絶対人には見られたくないモノとか、残された家族が困るものとかはありませんか?
家族に発見されるならまだしも、状況によっては、家族以外の赤の他人に発見されることになるかもしれません。
自分はもう死んでいるので恥ずかしくないでしょうが、遺族が恥ずかしい思いをするかもしれません。
きっと、あれもやりたかった、これもやりたかった、配偶者や子にあれだけは伝えておくんだった、などなど、心残りもあるかもしれませんが、もう死んでいるので伝えることもできません。
「葉隠」の教えには、いつ死んでもいいように、常に身綺麗にしておくというものがあります。
家の中や身の回りを奇麗にしておくのと同時に、思い残すことがないようにもしたいものです。
エンディングノートを書く
早めにエンディングノートを書くことで、これからどんな余生を過ごしたいのかが明確になるという副次効果もあります。
自分史を書いていき、これまでの人生を振り返ることは、自分で自分の人生の整理・棚卸しをすることになり、自分がこれまでに経験したこと、やり遂げたこと、やり残したことなどをちゃんと整理し認識することができます。
エンディングノートのおかげで、後悔のないよりよい人生を過ごすための目標が見えてくるとか、財産や物を整理する気になったり、自分のお墓やお葬式はどうしてもらいたいか、などなど、自分の残された人生の指標にもなり、限りある時間を良いものにできたり、遺言書を作る以前にあなたが突然死んだ場合にも、あなたの遺志ややりたかったことなどが書き残されていれば、遺族にとっても大変助かる意味のあるものとなります。
民法で形式が定められている遺言とは違って、エンディングノートに書くことの項目や形式には決まったものはありませんし、書きかけでもかまわないのですから。
エンディングノートには遺言のような法的効力/拘束力はありませんが、一面では形式優先の遺言書よりも、大事な故人の歴史や、生きざまや遺志が残ります。
エンディングノートは、コクヨやリヒトといった事務・文具メーカーなどからも内容充実したものが発売されていますが、シンプルなものでよければ、各地の市町村のホームページなどからダウンロードできる無料のエンディングノートでも必要十分ともいえるでしょう。
遺言書、財産目録を作っておく
親一人子一人(相続人が1名のみ)というような、争う余地のない、超シンプルな相続の場合であっても、不動産を含めた財産の処分方法や経緯、故人の想いや情報などが、残された遺族に伝わる効果は大きいので、せめてエンディングノートだけでもあれば、残された家族にとっては助かります。
相続人が二人以上であれば、なるべくなら「遺言執行者」を指定した遺言書を作っておくと良いでしょう。
「遺言」は民法第960条~1027条に定められており、故人の遺志を実現することを法律により担保されるため、遺言書の効力は絶大です。
遺言執行者を定めておけば、執行者一人で相続人全員を代表して手続きができるため、たとえ相続人のうちの誰かがゴネても、遺言執行者単独で全ての預金の引き出しや不動産の相続登記を(遺言のとおりに)実行することができますが、遺言執行者が定められていないと、まず相続人全員の印鑑を求められます。
実際、現金のほかにも預貯金、有価証券、不動産などの財産があれば、遺言執行(遺産分割)の実務は簡単ではありませんし、責任も重大です。
銀行・郵便局や証券会社、市役所、法務局、家庭裁判所などへ、相続人と相続財産を証明するための各種書類を集め、整え提出して相続手続きをしなければならないため、平日の昼間に手間と時間を割くことができ、かつ相続に関しある程度の知識がある人でなければ、容易ではないはずです。
遺言執行者は遺言の文中でしか指定できません(民法1006条1項)が、遺言があっても指定されていないときは、家庭裁判所に執行者を選任してもらうことができます。
また、誰にも相談せず遺言書を作り、何の相談もなく遺言執行者に指定された人は、執行者への就任を辞退することもできるため、面倒は御免と就任を断られる可能性もあります。
より安全策を考えるなら、相続のプロである我々士業者に、遺言作成と同時に遺言執行者も依頼するという方法も一案です。
またこのほかに、故人の遺志どおりに物事を運んでもらうための方法としては、生前に、信頼できる人との間で「死後事務委任契約」や「家族信託」契約を結んでおくという方法もあります。
★遺言書の法的効力
1 相続人の廃除
2 相続分の指定
3 分割方法の指定と委託/分割の禁止
4 相続人以外への遺贈
5 内縁者の認知
6 後見人の指定
7 負担者や担保責任者の指定
8 遺言執行者の指定または指定の委託
・
尊厳死宣言(公正証書/宣誓認証)
「尊厳死」は、「安楽死」(※現状、日本では違法行為)とは違います。
病気や老衰で、回復の見込みがなくなり、たとえば、長期間にわたって植物状態が続くような場合など、自力で飲食ができない状態になった時に、栄養点滴や喉や胃を切開して流動物を流し込む等、生命維持装置などによる人為的な延命治療は拒み、痛みや苦痛を緩和する処置だけは受けるという、人間としての尊厳を保った自然な死を迎えたいという意思を、元気なうちに表明しておく方法があります。
心身共に健全な内に、「延命処置は不要です。」との自分の意志を、公証人に認証を受けた文書(宣誓認証)、あるいは公正証書としておくことは、いざという時や、本人が亡くなった後に、お世話をしていた家族に迷いや後悔をさせることがない良い方法だと思います。
認知症対策(終末期対策)
自分が死んだ後のために、遺言や死後事務委任契約の対策を講じておくのはもちろん有用な対策ですが、死ぬ以前に怖いのが「認知症等による資産凍結」ではないでしょうか?
認知症の高齢者が保有する金融資産が2018年3月の時点で140兆円に上り、2030年度には200兆円を超えるとも予想され、深刻な問題になっているとNHK報道もされています。
また厚生労働省によると、既に認知症高齢者の数は500万人を超え、65歳以上の7人に1人が認知症であり、「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人、2025年には約675万人(65歳以上の5.4人に1人が認知症)に上ると予測されています。
認知症になってしまうと、軽度なうちだと悪徳セールスなどに引っかかって大金を払ってしまったり、重度になってくれば暗証番号がわからないなど老後のために蓄えておいた資産を自由に使えなくなったり、家族が代わりに預金を引き出そうとして本人の意思確認ができず銀行に断られてしまうケースが少なくありません。
また、怪しくなってきたので老人ホームに入った後、完全に認知症となれば、それまで住んでいた家にはもう帰ることができないのだからと、家と土地を売って家族が介護資金を捻出しようとしても、本人に契約能力(意思能力)がないので、本人が名義人となっている不動産の売却処分等も相続が発生(本人死亡)するまでは不可能になり凍結状態となります。
認知症対策も含めた生前対策としては、
・生前贈与 (相続税対策)
・資産の組換え/整理 (相続税対策/相続手続対策)
・遺言書 (相続手続対策/争族防止)
・成年後見制度 (認知症対策)
・家族信託 (認知症対策/資産承継/争族防止等) など様々な制度や方法が存在しますが、
中でも近年マスコミにも取り上げられるようになり、注目度や検索数が伸びてきているのが家族信託(民事信託)で、
・財産を信託法に基づき受託者(家族)が管理するので資産凍結しない。
・成年後見制度(任意後見/法定後見)のように後見人や後見監督人に報酬を払い続ける必要がない。
・家族が信託財産を管理運用するので後見人等より柔軟な運用ができる。
・遺言(遺産分割)の機能も持たせることができ、不動産の共有状態も避けられる。 などのメリットがあり、利用者/実績数も急激に伸びてきています。
家族信託についてはまた別途、トピックページに詳しく書かせて頂こうと思います。
葬儀/お墓
科学が進歩し、世の中が便利になっていくにつれ、都会への人口集中と地方の過疎化、共働きの常態化、家族・親族関係の希薄化など、相続や祭祀承継を取り巻く状況や考え方なども、昔とは随分変わってきました。
昔のように、一族郎党、代々その土地に住み続けているようなケースはもはや少数派になっています。
今住んでいる土地にお墓を作るのか、それとも子孫に少しでも手間を掛けないように納骨堂や樹木葬、海洋散骨など何か別の方法を取るのか、いずれにしても自分が死んだらどうしてほしいか、生きている間に家族には遺志を伝えておいた方が良いのではないでしょうか?
先祖のお墓を守ってゆくべき立場かどうか、菩提寺(檀家になっている寺)があるかなどの状況によっても、また個人の考え方によっても採るべき方法は様々でしょうが、近年では、従来からのお墓よりも、永代供養付き納骨堂や、樹木葬、海洋散骨などの需要が増えてきています。
まとめ
結局のところ、終活とは、『どう生きて、どう死ぬか』を真面目に考えること、とも言えそうです。
・残りの人生、何をすればよいかわからない…
・私が死んだあと家族はどうするだろう?
・遺言書に何を書けばよいかわからない…
・相談できる人がいない…
このようなことを考えながらエンディングノートを書いているうちに、心の中が整理され、それをもとに家族と話したり、専門家に相談したりすれば、見えてくるのかもしれません。
歳を取ったら「きょういく」と「きょうよう」
仕事をリタイアし、年金暮らしとなったあと、趣味の仲間や友達付き合いも少なく、することもなく、家の中にばかりいる人ほど、衰えが早く、認知症になったり、早く亡くなるようです。
「今日行くところ」と「今日する用事」がある人、いくつになっても新しいことにチャレンジできる人、つまり生き甲斐、やりがいを持っている人は、元気で長生きできる率が高くなります。
「坊主と先生は長寿」
→ 他人に施しを与え、感謝される人、アタマを使う人は長生きする。